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【光彦】
「そういえば、昔、ふたりで家出したことがあったなぁ」

【里桜】
「懐かしい……そんなこともあったわね」

それはまだ幼き日のこと。
理由は詳しくは忘れてしまったけど、アニメかなにかの影響だっただろうか。
俺達はふたりで手を繋いで家出したことがあった。

【光彦】
「里桜も覚えてるんだな」

【里桜】
「光彦とのことだったら、いろいろ覚えてるわ。
  ただ、思い出といってもたくさんありすぎるけど」

【光彦】
「その中では、家出はインパクト強い方か」

少なくとも、俺の中では大冒険だった。
今となっては、散歩程度に思えることでも、気の持ちようによって
ずいぶん違うように感じたものだ。

【里桜】
「あの時、道に迷ったのよね。本当は森の中にある神社に行きたかったのに、
  近道になるはずだって藪の中に入っていって……」

ふたり、手を繋いで山道を歩く。
里桜の言うとおり、途中で道を外れた俺達は、あっさりと迷ってしまった。
薄暗くなっていく森の中、お互いを頼るかのように、結ぶ手に力を込めた。

【光彦】
「恥を承知で言うと、あの時も今も、実は結構怖いんだ。
  里桜に格好悪いところを見せないために、あれでもがんばっていたんだぞ」

【里桜】
「そうだったんだ? でも、そうね……心細かったけど、光彦のおかげで平気だった。
  そして、初めて光彦のことを、男の子だって意識したの」

【光彦】
「俺、男だと思われてなかったんだ……
  そりゃ、今に比べて、身体とかも弱かったけど……」

【里桜】
「あ、光彦だけじゃなくて、他のみんなもよ?
  だって、それまでは、ケンカとかしても男の子に勝ってたし。
  そのせいで男とか女とか意識しなかったのよね」

【光彦】
「まぁ、そんなもんなんだろうな」

 


 



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